
プロフィール
スティーヴン・イッサーリス(チェロ)
Steven Isserlis,Cello
スティーヴン・イッサーリスは、従来の枠を超えた音楽に対する情熱を持つチェリストである。音楽的才能でも演奏技術でも世界中で賞賛されているのみならず、室内楽やリサイタルなど多彩な活動で聴衆をひきつけ、歴史的な資料を調べて失われた宝石のような曲目を見つけ出し、あるいは世界中の名門オーケストラや名指揮者たちとの舞台で演奏することの、いずれもに精通している音楽家である。
イッサーリスは近年世界の数々の名門オーケストラと共演している。
ごく最近ではボストン交響楽団、ダラス交響楽団、トロント交響楽団、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、フィラデルフィア管弦楽団、フィルハーモニア管弦楽団と共演。また、指揮者ではウラジミール・アシュケナージ、サカリ・オラモ、サー・コリン・デイヴィス、トン・コープマンやクリストフ・エッシェンバッハらとの共演の機会が多い。またピリオド楽器に対して強い関心を持ち、エイジ・オブ・エンライトゥンメント管弦楽団、クリストファー・ホグウッド指揮エンシェント室内管弦楽団、フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮シャンゼリゼ劇場管弦楽団のようなピリオド楽器のオーケストラとも共演している。2004年―2005年のコンサート・シーズンには、ボストンでフォルテピアノ奏者ロバート・レヴィンとともに、ベートーベンのチェロのための全作品を演奏した。
2005-2006年のコンサート・シーズンのハイライトは、東京交響楽団、チューリッヒ室内管弦楽団とミネソタ管弦楽団への客演、ダニエル・ハーディング指揮マーラー・チェンバー・オーケストラとのドイツ演奏旅行、イワン・フィッシャー指揮エイジ・オブ・エンライトゥンメント管弦楽団とのアジア・ツアー、およびフィルハーモニア管弦楽団とロンドン・フィルハーモニー管弦楽団へのロンドンでの客演である。また、イッサーリスはザルツブルグ音楽祭でリームのチェロ協奏曲を世界初演する。また、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団との2回の共演では、ベートーベンの三重協奏曲をイダ・ヘンデルとマルタ・アルゲリッチとともに演奏する。
イッサーリスの企画による室内楽演奏会は、演奏の質の高さだけでなく、プログラミングの巧みさと革新性によってもよく知られている。ごく最近のシーズンだけでも、ウィグモア・ホールでの「タネーエフと仲間たち」シリーズ、ザルツブルク音楽祭でのブラームス・シリーズ、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団との「眠れる美女」と題された音楽祭、ロンドン、ベルリンおよびウィーンでのブラームス、ドヴォルジャークとフリューリングの音楽によるプロジェクトなどがある。2004年春には、ウィグモア・ホール、王立音楽アカデミー、バービカン・センターなどを拠点に、イギリス室内管弦楽団などの公演を含むサン・サーンスの音楽による音楽祭の芸術監督を務め、高く賞賛された。
また、2005-2006年シーズンのリサイタルでは、英国、ダブリン、ベオグラード、およびミラノでスティーブン・ハフとデュオを、バースとマドリッドでバッハの作品による無伴奏リサイタルを行なっている。デーネシュ・ヴァールヨンとはウィグモア・ホールで「シューベルトのウィーン」と題するリサイタルを行い、またシーズンの後半では同ホールでジョシュア・ベルらとシューベルトの室内楽作品を演奏する。
またアナ=マリア・ヴェラとともに、ニューヨークのナインティー・セカンド・ストリートYの「リサイタルで聴く著名アーティスト」シリーズでリサイタル・デビューする。
スティーヴン・イッサーリスは現代音楽においても気鋭の取り組みを続けている。サー・ジョン・タヴナーと長い間コラボレーションを続けており、チェロと管弦楽のための「The Protecting Veil」The Protecting Veilは、イッサーリスのために書かれ、彼が最初に録音した曲である。最近彼のために協奏曲を書いた他の作曲家にはデイヴィッド・マシューズとカール・ヴァインがおり、また、将来にわたり数多くの作品委嘱を計画している。
数々の受賞歴で飾られたディスコグラフィーは、彼がレパートリーに抱く多様な関心を反映していることがわかる。 彼の最新のリリースにはロリン・マゼール指揮バイエルン放送交響楽団とのシュトラウスの交響詩「ドン・キホーテ」、スティーブン・ハフとのラフマニノフとフランクのソナタがある。スティーブン・ハフとの最新録音では、ドヴォルジャークとスークの作品をカプリングした「ブラームス:ソナタ集(ハイペリオン)」、BISからは子供のチェロ音楽のCDがリリースされている。
またイッサーリスはほとんどの自分のCDの曲目解説を書くことからもわかるように、執筆活動にも積極的で、主要新聞や有名雑誌への寄稿も多い。彼が子供向けに六大作曲家の人生を描いた「Why Beethoven Threw the Stew 邦題:『もし大作曲家と友達になれたら・・・』(音楽之友社刊)」は、2001年10月にフェイバーフェイバーから刊行され、好評により既に3回増刷されている。日本語版は2002年秋に刊行され、さらにいくつかの言語に翻訳され、刊行されている。2番目の本、「Why Handel Waggled his Wig」は2006年5月に刊行された。彼の新鮮で、まねのできない文体と同じく、親しみやすい人間性で、スティーヴン・イッサーリスは、子どもたちにも人気を博しており、子どものためのコンサートを喜んで行なっている。
音楽教育にも強い関心を持ち、多くの教授職にある。IMSプロシア・コーヴの室内楽フォーラムと国際マスタークラスの芸術監督をつとめ、また、先ごろヨーロッパ弦楽器教職員協会の会長に就任した。米国、ヨーロッパ、およびオーストラリアのいくつもの名門音楽大学の求めに応じ、定期的に指導している。
また、フェイバー・ミュージック社と、インターネット出版社であるsheetmusicnow.comのために、校訂、編曲も行っているほか、ニューヨークを根拠地とする慈善団体「Music for All Seasons」の総裁も務めている。
1998年、その音楽活動が認められ、名誉大英勲章3位(CBE)を受章。また、ロイヤル・アカデミー音楽院の名誉会員でもあり、2000年には、シューマンの出生地であるツヴィカウ市のシューマン賞を受賞した。この賞は、これまでギレリス、マズア、リヒター、およびフィッシャー・ディースカウが受賞している。 1993年、彼は米国でピアティゴルスキー賞を、英国でロイヤル・フィルハーモニー協会賞を受章した。また、2001年にはクラシック音楽の人気を向上させることに対しての功績によって、Classic FMの「赤いf 賞」を受賞、ロンドンの雑誌「Time Out」は彼を「2002年クラシック音楽アーティスト・オブ・ザ・イヤー2002」と命名した。2004年シドニー・オペラ・ハウスでのカール・ヴァインの新作チェロ協奏曲の演奏では、2005年ABC賞において「オーストラリアの新作の最優秀パフォーマンス賞」を受賞した。
スティーヴン・イッサーリスは日本音楽財団の厚意により貸与されている1730年製のフォイアマン・ストラディバリウスを使用している。
公式ホームページは http://www.stevenisserlis.com/
■批評
●美しくも繊細な独自の音楽世界がオーラを放つ イギリスの名チェリスト
●ガット弦で紡ぐ繊細な音色
一つの楽器から、これほど豊かな表情を引き出す演奏家も珍しいのではないか。イギリスのチェリスト、スティーヴン・イッサーリスのリサイタルを聴いて、まず感じたことだ。
わずかな強弱の変化や、弓使いの加減によってあらゆるフレーズが生き生きと呼吸する。一流の舞台俳優の発声のように、憤怒に満ちた野太い声から、かすかなささやき声まで、まさに自由自在。彼が現代のスチール弦ではなく、伝統的なガット弦にこだわるのもうなずける。これは歴史的な正当性のためではなく、その繊細な音色の魅力ゆえなのだろう。とりわけドビュッシーのチェロ・ソナタでは、目もくらむような色彩が聴き手を圧倒した。(後略)(4月6日 浜離宮朝日ホール) 沼野雄司 (読売新聞 2004年4月13日)
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