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講師のくわはたけんさん 育成 2

(C)神奈川県民ホール

劇場運営マネージメント講座
シリーズ「これからのインクルーシブ社会と公立文化施設の取り組み」
第4回 文化施設とユニバーサルデザイン 

  • 2017年1月20日 実施
  • 大ホール&小会議室

ある障害への配慮が別の障害にとってバリアになることがあります。
歩道の点字ブロックと車椅子の関係は、その代表例でしょう。
このようなバリア同士の衝突はバリアフリー・コンフリクトと呼ばれます。
そして今後私たち文化施設がバリアフリー化を進める時、
多くのコンフリクト(衝突)に直面することになります。

そこで、配慮をより多くの方の使いやすさにつなげるため、
ユニバーサルデザイン(以降UD)について考える講座を開催しました。
講師は、これまでに多くの医療・福祉・公共施設のUD化に携ってきた、
クワハタデザインオフィス代表の桑波田 謙氏です。

まずは、UDという観点を持たない40数年前に設計された県民ホールの館内ツアーに出発。
車椅子、白杖、視野狭窄グラスによる不便さも体験しながら周ってみます。
来館者の立場になり、ロビーに立ってみます。
目的地へたどり着くための案内は十分か、分かりにくい理由はなにかを考えます。
初めてUDを考える参加者の視点では、分かりづらいことは分かるけれど、
何が足りないのか、課題を見出すところまでにはなかなか至りません。

後半は、小会議室で、「ユニバーサルデザインとは何か」を知る講義形式です。
UDの概念は1985年にアメリカで提唱され、
「できるだけ多くの人が利用できるデザインにすること」を目的とする、7つの原則が示されました。
そのうち、文化施設には、最初の3つが重要と考えられます。

 原則1 Equitable use:公平に利用できる(どんな人でも使いやすく手に入りやすいこと)
 原則2 Flexibility in use:使い方に柔軟性をもつ(さまざまな人の好みや能力にあうように)
 原則3 Simple and intuitive use:簡単で直感的な使い方(使う人の能力は関係なく、簡単に使えること)

数字の「8」、「3」、「9」、アルファベットの「a」、「d」は、
ぼやけて見える方には識別しにくいけれど、これらの見やすさを考慮した書体があること。
薄暗い客席での座席番号の分かりにくさは文化施設の共通の悩みです。
これは、多くの人の分かりやすさにつながる解決策の一つかもしれません。
また、サインによる案内、人による案内の連携を作ること。
案内する人が必ずいる場所であれば、そこにはサインが不要かもしれません。
そして、最も重要なことは、一度導入して終了ではなく、
さまざまな人に体験してもらい、確認し、より良い形を求めて「スパイラルアップ」を続けること。

「解決策はこれです」と単純に答えを得られることではない、
自らがそれぞれの場所に相応しいUD化の方向を探していくために、
学び、考え続けることを知った講座となりました。

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