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講師の田中ともこさんと、田中みほさん 育成 2

©神奈川県民ホール

劇場運営マネージメント講座
シリーズ「これからのインクルーシブ社会と公立文化施設の取り組み」
第12回 認知症を知る

  • 2020年2月4日 実施
  • 神奈川県民ホール 小会議室

認知症についての誤解の一つは、本人に自覚がないと思われていることです。そんなことはありません。もっとも苦しみ悲しんでいるのは本人です。脳のコントロールを失い、自らの行動を制御できなくなってしまったことを自覚しています。

今回の講師は、神奈川県 福祉子どもみらい局 福祉部高齢福祉課の田中智子(保健師)さんと、田中美穂さんにお願いしました。認知症理解の普及と、認知症の人にやさしい地域づくりを担当されているお二人です。
神奈川県による認知症サポーター養成の取り組みはこちら

講座は座学とグループセッションの二部構成で行われました。座学で学ぶのは認知症とは何かです。詳しい説明は省きますが、認知症とは、記憶力、理解力、判断力などが低下して、社会生活や日常生活に支障をきたす状態を指します。これらは脳の機能低下によって引き起こされますが、そこに至る原因は様々です。決定的な治療法はまだ見つかっていません。現在最も有効な対処法は早期の発見と治療です。
第二部はグループセッションです。グループに分かれ、それぞれの施設で出会った認知症の方とその対応について事例を出し合いました。どの施設にも共通するのは、コンサートの休憩時間に席を離れ、そのまま戻れなくなる例です。脳の短期記憶をつかさどる部分が年齢とともに衰え、記憶を保全できなくなるのです。他にも来館した直後に見当識を失い、自分がここで何をしているのか分からなくなる例も少なくありませんでした。

認知症の方への対応には、三つの心得があります。「驚かせない」、「急がせない」、「自尊心を傷つけない」。こちらのペースで事を運ぼうとしても、うまくいきません。それどころかボケ老人のように扱われることに自尊心を傷つけられ、怒らせてしまうかもしれません。最初に書いたように、認知症の方は自分で自覚しています。でもその現実を受け入れるのは難しく、他人に心配されたりすると、自尊心を守ろうと逆上してしまうこともあります。早く解決しようとはせず、相手のペースに合わせ、ゆっくりと会話をつなぎ、手助けできることが見つかるのを待つのが肝心です。

日本は今、超高齢社会のただ中にあります。超高齢社会とは、人口の21%を65歳以上の高齢者が占める社会のことです。現在の数字は28%超です。この先20年にわたり上昇を続け、ピーク時には38%に達すると予想されています。単純に言えば、100人のうち38人が65歳以上という、人類史上例の無い年齢構造の社会が誕生します。この未知の社会では、高齢者の3人に1人は認知症と予想されています。100人いれば38人が高齢者で、そのうち12人は認知症となります。
このように書くとなにか恐ろし気な未来がやってくるかのように思われがちですが、現実を認識し、対応策を生み出し、平和裏に共存してゆくのが人類の知性です。認知症の特効薬はまだ発明されていませんが、周りが理解しサポートすることがその第一歩と学んだ講座でした。(参照:令和元年版高齢社会白書 内閣府)

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  • 認知症サポーターに渡されるオレンジのリング

    講座参加者は認知症サポーターと認定され、オレンジリングが配られました。