• トップ/
  • 少しずつバリアフリー・UD化 その 21 階段の視認性向上 大ホール編

段鼻を白く塗装した階段 UD 3

©神奈川県民ホール

少しずつバリアフリー・UD化
その 21 階段の視認性向上 大ホール編

  • 2021年7月21日
  • 神奈川県民ホール 大ホールロビー

人は光の反射で物を見ます。物に光が当たり、その反射を目でとらえ、脳に信号が送られ、対象物を認識する。これが見るという行為です。当然ながら目から入る情報量が多いほど、対象物を正確に認識できます。しかし目の情報収集能力は、加齢とともに低下します。加齢により視力が低下することはよく知られていますが、光の明暗差を認識する能力も低下することは、あまり知られていません。この能力が低下すると、対象物の立体感が掴みにくくなります。絵画を例にすると、画家は絵具の濃淡で画面に明暗差をつけ、平面のキャンバスに立体感を作り出します。このように、立体感を認識するうえで、光の明暗差は大きな比重を占めているのです。

立体感が分からなくて最も困る場所といえば、そう、階段です。視力低下は眼鏡で補えますが、明暗差の場合は個人で補う方法はなく、対象物に手を加えるしかありません。そこで大ホールロビー階段の各段のヘリを、思い切り白く塗りました。次の段までの距離や高さを瞬時に把握できるようにして、転倒のリスクを軽減させるのが目的です。デザインとか雰囲気とかは後回しにして、視認性最優先の安全な階段を目指し、ブラッシュアップを続けます。

このページを印刷

  • 正面から見たところ

    もとは薄暗い色だった滑り止めの上から白いペンキを塗布。コントラスト比が高くなり視認性が向上した。

  • 上手側からの見た目

    最大で約2,500名が一斉に退場することもある階段。手すりの設置は通行の妨げになる可能性もある。

  • 客席内に敷設した白い線

    同じ白い線でもこの線の役割は、床と壁の境をアピールして、弱視の方が壁に衝突しないようにすること。(大ホール客席)