貸館公演の来場者が興奮して、壁に穴を開けた。
利用者がホールの設備を壊した。
会場機材のトラブルで貸館公演が中止になった。
未成年者から施設利用の申込みがあった。
このような事例は、劇場では常に起こる可能性があります。
こうした事案が発生したとき、施設の運営側は、
貸出規則やそれぞれの慣習によって収拾をはかろうとします。
その解決策は法的にはどのような根拠に基づいているのかを学びなおすために、
弁護士の望月先生に来ていただき講座を開催しました。
まずは、「前提として知っておきたい法律知識」の講義から始まりました。
憲法、法律、条例、慣習、ルールと、文化施設運営業務には実は様々な「法」が関わっていること、
例えば、
施設側と利用者の間には、「契約責任」が伴い、
来館者とは、「非契約責任≒不法行為責任」が関わってくる等々、
民法や商法の条項の例示とともに講義は進みます。
しかし、どんなに知識があっても、予防をしても、法律問題のトラブルは起きてしまいます。
その際、どのような解決手段があるのかといった説明も加わり、
法律と解決方法の基礎知識を得ることができました。
さて、二部は、4つの事例を法律に照らし合わせての解説です。
①トラブル状況の説明→
②主催者側と施設側の“それぞれの見解”の例示→
③講師による“それぞれの見解”の法的正当性の有無の説明。
トラブルを防ぐために、すぐにでも施設が調えておくべきことは何か。
今回参加した17施設のだれもが、4つの事例解説を聞きながら考えていたようです。
「自分はこう考えるが、法的にはどうでしょうか?」
「では、自分たちの規則にこのような一文を加えれば未然に防げるでしょうか?」と、
講座の後半は、このような参加者の質問に、民法や商法の関連条項や判例を挙げながら、
講師が丁寧に回答する質疑応答の時間となりました。
「未成年が法的に強く保護されていること」「施設を管理する権利」など、
それは誰もが分かっている(ように思っていた)ことです。
このような法的事項と施設運営業務がどのように関わるのかを法律と照らし合わせながら、
弁護士の先生と解決策を考える作業は、新しい切り口で業務を再確認することでした。
文化施設に携わることは、
“表現の自由を保障する憲法21条を支える仕事である”、という望月先生からのメッセージで講座は終了し、
参加者からは、「改めて、舞台保守予算の確保を行いたい」「再度、自分たちの利用規約を確認する」
「初めて、法律の知識を知った」と、それぞれの立場からの感想が寄せられました。
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- 劇場運営マネージメント講座 シリーズ「基本を学びなおす」 第1回 施設運営の慣習を法に照らす
育成 2
(C)神奈川県民ホール
劇場運営マネージメント講座
シリーズ「基本を学びなおす」
第1回 施設運営の慣習を法に照らす
- 2017年2月14日 実施
- 大ホール 3階席ロビー