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高齢者を疑似体験している参加者 育成 2

(C)神奈川県民ホール

劇場運営マネージメント講座
シリーズ「これからのインクルーシブ社会と公立文化施設の取り組み」
第5回 県民ホール版 高齢者疑似体験 

  • 2017年2月21日 実施
  • 大ホール

日本は1995年に高齢社会となり、2007年には超高齢化社会へ突入しました。
更に10年が過ぎた現在、日本の高齢者人口は増え続け、その影響はホールや劇場にも現れています。

この10年の間で、主に高齢者を対象とした平日昼間の公演は増えています。
しかも観に来る方々の気は若く、とてもお元気です。
とはいえ、身体は確実に歳月を重ねているので、以前と同じように動けるわけではありません。
そのような方々は会場で何に困っているかを知るために、劇場に特化した
「神奈川県民ホール版 高齢者疑似体験」を開催しました。

神奈川県公立文化施設協会と共同で開催した今回の講座には、
県内の文化施設勤務者に加え、イベンター、レセプションスタッフなどが参加しました。
最初にインストラクターから高齢化に伴う困難についての話しがあり、
続いて参加者を二人と三人のグループに分けます。各グループにはインストラクターが一人つきます。

先ず最初に一人、疑似体験用の器具を装着します。
途端に年齢80歳で重度の白内障の身体に生まれ変わります。残りのメンバーは補助役です。
封筒が手渡されます。それを開けようとしても、指先の感覚が鈍っているので上手くいきません。
補助の人に開けてもらいます。次に封筒内の指示書を読みます。無理です。補助役に読んでもらいます。
指定された座席へ向かえとのことです。階段を登ります。面倒です。目指す座席の番号プレートも読めません。
一人では何も出来ない事へのストレスが高まります。
ロビーへ出ます。階段の手すりと壁が同系色なので見分けがつきません。
自販機でジュースを買うのも大変です。小銭がつまめません。
置いてある印刷物の文字は小さく色も識別困難......と、一事が万事こんな具合です。

二時間弱の体験後、休憩をはさみ、グループごとに体験で感じたこと、
それに対し必要な配慮、自分の施設で行えそうな対応などを話し合いました。
グループごとに意見を発表し、インストラクターからまとめの言葉がありました。
「頭の中の考えに身体が追いつかない高齢者自身の歯がゆい思いを理解し、困っていそうな人を見かけたら、
プライドを傷つけないよう気を使いながら声をかけて下さい」。
万人に等しく訪れる老いについて、学ぶ一日でした。

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