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会場の様子、スクリーンに映像が投影されている 育成 2

(C)神奈川県民ホール 

劇場運営マネージメント講座
シリーズ「これからのインクルーシブ社会と公立文化施設の取り組み」
第7回 白杖の人に教わる的確な情報提供

  • 2017年11月21日 実施
  • 逗子文化プラザホール さざなみホール

視覚に障害のある人が街を歩く際に必要な情報は、晴眼者がイメージするものとはかなり違います。
電話で施設への道順を尋ねられて、
「駅前から点字ブロックが敷設されています」と答えるだけでは役には立ちません。
「歩道の左脇に有料駐車場があります。車の出入りがあるので気をつけてください」
「マクドナルドのポテトの匂いがしてきたら、およそ150メートル先に目的の施設があります」
「施設の前の信号は、青のときに音が鳴ります」
こうした複合的で安全に配慮した情報を、当事者は求めています。

そこで、必要な情報を実地に教えてもらうために、当事者の方と一緒に歩いてみました。
今回の会場は逗子市の文化活動の中心施設、逗子文化プラザホールです。
講師は、昨年県民ホールの「ことばの地図」を作って以来お付き合いのある、NPO法人ことばの道案内の皆さんです。
会場と最寄りの京急新逗子駅の間を一緒に歩いて「ことばの地図」を作成しました。

ことばの地図は、見えない・見えづらい人のための、言葉の説明による道案内です。
白杖を持った当事者、ポイント間の距離を測る人、距離と当事者のコメントを記録する人が一つのチームとなって作成します。

今回は、白杖の当事者以外を講座参加者が担当しました。

記録用紙の一行目は、
「目的地は、駅の改札を背にして右3時の方向、およそ350メートル、約7分」です。
これで大まかに空間を認識してからスタートします。
途中、階段があれば段数を、舗道と車道の境がなければ注意事項として記録してゆきます。
「今歩いているのは橋ですか? では橋を渡ると書いてください。見えなくても風が変わるので目安になります」
「この橋は少し湾曲していますね。始まりから頂点までの距離を測って、その先はやや下りになると書いてください」
こういった言葉は、一緒に歩かないと聞けません。
「新しいセンサーが開くような体験」と参加者が感想を述べたのも頷けます。

参加者による地図作りが終わると、会場へ戻って接遇の講座です。ここでも新たな知覚の扉が開きます。
「コンサートではボーカルの位置を教えてください。それが分からないとずっとスピーカーの方を向いたままなんです」
当事者の方に指摘されないかぎり、気がつくことはないでしょう。

様々な発見とともに、3時間10分の講座があっという間に終わりました。
今回の講座で、私たち施設運営者は、見えない・見えにくい人を理解できていなかった事を痛感しました。
当事者の方の言葉に耳を傾け、できることから一つずつ改善していきます。

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