• トップ/
  • 劇場運営マネージメント講座 シリーズ「基本を学びなおす」 第5回 トラブルに発展させないクレーム対応術

  育成 2

 

劇場運営マネージメント講座
シリーズ「基本を学びなおす」
第5回 トラブルに発展させないクレーム対応術

  • 2019年3月19日 実施
  • 神奈川県民ホール 大会議室
「接客業」「クレーム」という言葉から思い浮かぶのは、街中の飲食や小売店です。ホールや劇場ではありません。
しかし、日々お客様をお迎えしている私たちも接客業の一員であり、クレームは受けます。そして他の接客業種に比べ、私たち文化施設はクレームに慣れていません。そこで、実践的なクレーム対応術を学ぶための講座を開催しました。
今回の講師は、株式会社ランシステムでCS(カスタマーサービス)室の室長を努める青木茂男さんです。長年警視庁の刑事として組織犯罪を担当し、暴対法の成立にも携わった異色のキャリアの持ち主です。

講座で最初に学んだのは、「クレームは初期対応で鎮火」という鉄則です。ここを間違うと炎上して持久戦、消耗戦に突入します。
では、間違わないためにどうすればいいのか。相手の感情を理解することです。
ここで言う理解とは、誠心誠意謝るとか、気持ちに寄り添うといった感覚的なことではありません。もっと科学的なものです。
例えば、人は情報の七~八割を視覚から得ているという説があります。感情の高ぶっている人は、相手の言葉をほとんど聞いていません。脳にインプットされるのは相手の表情、仕草、声のトーンです。意識すべきはこれらの要素であり、話しの内容ではありません。
この事実を踏まえた上で、感情を鎮静化し浄化させるのが初期鎮火です。ではどのように……と、残念ながらここで全部を書くわけにはいきません。その代わりといっては何ですが、講座に参加できなかった方のために、クレーム対応の基本的な考え方を記しておきます。

県民ホールでも経験がありますが、クレーム対応で一番難しいのは、相手の目的を探り出すことです。
謝罪の言葉を求めているのか。謝罪文を求めているのか。金品を求めているのか。そもそもクレームの内容に正当性はあるのか。これらを判断するために、最低でも対応に30分はかけます。早く抜け出したくて結論を急ぐのはご法度です。
「上司に相談するのも大変だろうから、あんたの名刺にお詫びを一筆書いてくれたらそれでいいよ」。
こんな甘言に乗せられると後から痛い目にあいます。その名刺は、施設が非を認めた証拠品として悪用されます。

目的が分かれば、対応は絞られます。
先ず施設側に非がある場合。もちろん謝罪です。そして相手に伝わる謝罪には、先述した通り冷静な技術が必要です。最終的に相手の感情が浄化され、施設への憤りを好意へと転換できれば、完璧です。
次に謝罪文。これも上記の名刺の例があるので、安易に請け負ってはいけません。
そして目的が金品の取得である場合。これは内容次第では犯罪にあたります。
相手が最初からそのつもりであれば、対応はシンプルです。犯罪の成立に必要な言動を相手から引き出し、これ以上の要求は犯罪になる旨警告します。それで止まなければ警察に通報です。「恐喝罪」「強要罪」「不退去罪」などを調べておくと、このとき役に立ちます。

対応に苦慮するのは、自分がクレーマーになっていることに気がつかない人です。
本人は悪気が無いので、会話が成立せず、同じ話しが延々と繰り返されます。「十分にお話しは伺い、こちらとしても出来る限りの対応は致しました。これ以上は業務に差し障るので、お引取りください」と、やんわり業務妨害ですよと告げても伝わらない。最近このパターンが増えています。何度か警告して話を切り上げる、電話であれば切るしか対応はありません。

ここで書いたのは、講座で学んだことのごく一部です。他にも様々な事例と対応例が紹介され、それぞれの対応には、根拠となる心理学のデータや法律の解説が付きました。この根拠を知っておけば、対応の際の判断基準となり、自信が持てます。参加者アンケートに、「丸腰で立ち向かう必要はないと知った」とありましたが、まさにその通りです。
様々な事例を淀みなく解説してゆく講師の知識の深さと、時おり挟む刑事時代の経験談に引き込まれ、二時間が二十分に思えるほどの密度とスピードで講座は終了しました。

このページを印刷