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主催事業情報 2023/1/8 【インタビュー】中田恵子(オルガン・アドバイザー) 新シリーズ「オルガンavec」第一弾に向けた想い

中田恵子 特別インタビュー

オルガン・アドバイザー中田恵子プロデュースによる新シリーズ、<オルガン avec>がいよいよスタート。

来月に迫った第1弾に向けて、ご自身の想いを伺いました。

 

©taira_tairdate

 

《シリーズについて》

— 今回が第一回目となる<オルガン avec>シリーズでは様々なジャンルの方々とコラボレーションされるご予定との事ですが、初回はバロック弦楽アンサンブル。その理由はなんでしょうか。

 

中田:県民ホールのオルガンは小ホールに設置されており、大きなコンサートホールに入っているオルガンとは、空間的にも楽器の規模的にも違う特徴があると思います。433席という親密な空間、舞台から遠く高い所に置かれているのではなく、舞台上に設置された中規模のオルガン。オルガンの規模が大きくないということは色々な制約もあるのですが、逆にこの空間とオルガンを生かした企画を立てることもできると思っていました。以前より、オルガンと共に室内楽を演奏するにはぴったりな空間だな、と感じていました。

バッハの時代、カンタータなどのアンサンブル作品は現代によく用いられる小型のポジティフ・オルガンではなく、教会に設置されたオルガンで弾かれていました。オルガンが置かれたバルコニーで、その他の器楽奏者たちもオルガンの側でコンタクトを取りながら演奏していたのです。県民ホールのオルガンでは似たような環境が舞台上で実現できると思い、弦楽とのアンサンブルを考えました。特に今回のプログラムで中心に据えている、オルガンがオブリガートで演奏するアンサンブルでは、大オルガンならではの迫力を出せると思います。

 

《今回の出演者について》
— 今回の共演者はどのように決まっていったのでしょうか。

 

中田:ヴァイオリンの長岡聡季さんは、東京藝術大学時代に所属していたバッハ・カンタータ・クラブの先輩で、学生時代から音楽的にも精神的にも頼れる先輩です。ヴァイオリン・ソナタでご一緒できるのも今から楽しみです。今回豪華にもチェロとヴィオラ・ダ・ガンバ両方を弾いてくださるエマニュエル・ジラールさんは、以前から演奏会やCDで演奏を聴かせていただきその音楽に惹かれていたので、初共演をとても嬉しく思っています。コントラバスの西澤誠治さんは、バッハ・コレギウム・ジャパンの通奏低音群として共演させていただいたことがあり、尊敬する大先輩です。西澤さんのコンバス上で奏でられる音楽は純粋に楽しく、是非今回もご一緒させていただきたくお願いしました。ヴァイオリンの大光嘉理人さん、ヴィオラの吉田篤さんは私は初めましてなのですが、色んな場面でご活躍を拝見させて頂いており、今回の出会いを光栄に、そして本当に楽しみに思っています。素敵なメンバーとの共演が叶い幸せです!

 

 

ヴァイオリン:長岡聡季

 

ヴァイオリン:大光嘉理人

 

ヴィオラ:吉田篤

 

©Fotofolly 

チェロ、ヴィオラ・ダ・ガンバ:エマニュエル・ジラール

 

©読響 

コントラバス:西澤誠治

 

《今回のプログラムについて》
— プログラムにはソロ、室内楽、協奏曲と多彩な作品が入っています。プログラムはどのように考えられましたか。選曲や曲順はすんなりと決まったのでしょうか、あるいは大変だったでしょうか。

 

中田:西澤さん、長岡さん、ジラールさん、県民ホールスタッフと私とでオンラインでミーティングをしつつ決めました。私が演奏したいと思っていた曲をまず列挙し、それに対して「だったらこれも入れたら?」など新しいアイディアを足してくださいました。それを私が一度持ち帰って曲順を考え、皆さんにまたご意見を伺い決定しました。結果的にとても充実したプログラムになったと思います。一人では思いつかないような曲やアイディアも頂けたので、皆で話し合えて本当に良かったです。


— 今回のプログラムにはテーマ、あるいは「実はこういう隠れた主題が」などがあったりしますか。

 

中田:「バッハのオルガン協奏曲の可能性を探る」ですかね。

最初に演奏するバッハのカンタータ第35番のシンフォニアは、オルガンのオブリガートがある作品ですが、後にチェンバロ協奏曲に編曲されています(バッハによる編曲は未完)。また、ジラールさんと演奏するヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ第1番は、本来ガンバとチェンバロのために書かれた作品ですが、第4楽章は、後にバッハ自身によってオルガンのソロ作品に編曲されています。

今回ヘンデルのオルガン協奏曲も演奏しますが、ヘンデルは「オルガンを独奏楽器とした協奏曲」というジャンルを初めて作ったとされています。バッハはオルガンの協奏曲を書いていないのか、または楽譜が残っていないだけなのか分かりませんが、現存する鍵盤楽器の協奏曲はチェンバロ協奏曲のみです。

プログラム最後の曲は、チェンバロ協奏曲(BWV1055)になりますが、今までお話したように、バッハがカンタータのオルガン・オブリガートをチェンバロ・パートに置き換えチェンバロ協奏曲としたり、チェンバロとガンバの作品をオルガン独奏曲に編曲したりしていた、という過程を考えると、チェンバロ協奏曲をオルガン協奏曲として弾いてみるのもアリなんじゃないか、と思います。もしかしてバッハもそんな事をしていたかもしれないですよね。


— ご自身の最新CDに収録されている曲もプログラムには入っています。やはり特別な思い入れがあるのでしょうか。

 

中田:このトッカータは、言わば「一人協奏曲」のような曲です。オルガンはアンサンブルの一部にもなり得るし、両手両足を駆使し、ストップを沢山使って大規模に一人オーケストラのようなこともできてしまう楽器です。その面白さを感じていただけたらと思い選びました。フーガは、二重フーガになっています。オルガンならではの重厚さ、各声部が減衰することなく積み重なっていく立体感が魅力です。

 

©taira_tairdate


— 今回のコンサートでご自身が楽しみにされている点は何でしょうか。

 

中田:楽しみしかないですね。この空間でオルガンと弦楽のアンサンブルがどう響くか、リスペクトするメンバーとどんな楽しいアンサンブルを生み出せるのか。そして始めて取り組む曲との出会いも本当に楽しみです!

 

— 今回のコンサートからこういう事を聴衆の皆様に受け取って欲しいと思われる点がありますでしょうか。

 

中田:これから続いていくavecシリーズは、オルガンと何かを掛け合わせていくアドバイザー企画です。オルガンを好きな方にその化学反応を楽しんで頂きたいのはもちろん、avec 〇〇(今回は弦楽)を取っかかりにオルガンに出逢うきっかけになってもらえたらとも思っています。

「オルガンには今まで関心が無かったけど弦楽アンサンブルは好きだから行ってみようかな」とか「弦楽にオルガンが入ったらどんな響きになるのだろう」と興味を持っていただけたらいいな、と。足を運んでいただいたその先で「あぁこんなにオルガンて魅力的で面白いんだ!」と思ってもらえることが今の私の目標ですね。

 

《チケット発売中》

 C×Organ オルガン・コンサート・シリーズ

『オルガン avec バロック・アンサンブル』

【日時】2023/2/11(土・祝)15:00 開演(14:15 開場)
【会場】神奈川県民ホール 小ホール
【料金】全席指定

 一般¥3,500 学生(24歳以下・枚数限定)¥2,000

 セット券(3/25C×baroqueとセット/枚数限定)¥7,000

 

 公演詳細はこちら

 


 

中田 恵子 NAKATA Keiko, organ
東京女子大学文理学部社会学科卒業後、東京藝術大学音楽学部器楽科オルガン専攻卒業。同大学院音楽研究科修士課程を卒業時、修士論文ではJ.S.バッハ《トッカータ ハ長調》(BWV564)をめぐる演奏解釈を論じ、日本オルガニスト協会年報誌JAPAN ORGANIST 第38巻に掲載される。その後渡仏。パリ地方音楽院で研鑽をつみ、審査員満場一致の最優秀の成績で演奏家課程を修了。これまでにオルガンを湊恵子、三浦はつみ、廣野嗣雄、廣江理枝、クリストフ・マントゥの各氏に師事。チェンバロを大塚直哉、鈴木雅明、ノエル・スピートの各氏に師事。
2013年にフランスのビアリッツにて行なわれた第11回アンドレ・マルシャル国際オルガンコンクールにて優勝。併せて優れた現代曲解釈としてGiuseppe Englert賞を受賞する。帰国後もヨーロッパ、ロシアで演奏ツアーを行うなど、国内外で幅広い演奏活動を行う。2016年〜2019年、東京芸術大学教育研究助手を務め、現在、(一財)キリスト教音楽院講師、国際キリスト教団代々木教会パイプオルガンクラス講師、玉川聖学院オルガニスト、日本基督教団鎌倉雪ノ下教会オルガニスト。(一社)日本オルガニスト協会会員、日本オルガン研究会会員。2019年、キングインターナショナルよりデビューCD「Joy of Bach」をリリースし、「レコード芸術」9月号の準特選盤に選ばれる。また、フランスの音楽誌Diapasonにおいても、音叉5つ獲得という高い評価を受けた。2021年4月より神奈川県民ホール オルガン・アドバイザーに就任。