神奈川県民ホール開館50周年記念オペラシリーズVol.2
オペラ『ローエングリン』
サルヴァトーレ・シャリーノ作曲
2024年10月、上演決定!
神奈川県民ホール開館50周年記念オペラシリーズとして、オペラ『ローエングリン』(サルヴァトーレ・シャリーノ作曲)を上演します。
演出に挑むのは、映画作家・振付家・ダンサーとして活躍する吉開菜央。
今後の展開をお見逃しなく!
- 会場 大ホール
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お問い
合わせ 神奈川県民ホール 045-662-5901(代表)
※詳細は決定次第、発表いたします。
これは あなたの 居場所のはなし。
吉開菜央 メッセージ
今回、オペラを演出するという自分でも思ってもみなかったことに挑戦する機会をいただき、最初はとても驚きました。ですが、何度か作品についてのお話を伺ううちに、シャリーノの「ローエングリン」という作品は、たしかに今までわたしが映画制作、踊りをするうえで探究してきたことと重なる部分があるように思いました。この作品はいわゆる一般的に想像されるようなオペラ、壮大なセットの上で大勢の歌手やソリストが声高らかに歌い上げるような作品ではありません。歌い手の声は、音楽のメロディーに歌詞をのせて歌うというよりも、ため息や呟き、舌打ちや深呼吸に言葉をのせて、語りかけるように響いてきます。感情によって変質する音、言葉を喋る息遣いそのものが、音楽であり歌であるとでもいうように。演奏される楽器の音も、歌声の背景としての演奏ではなく、それぞれ独立した生き物のようであり、息、声、言葉、感情、歌、音、音楽が、あまり聴いたことのない形で調和と分裂を繰り返しているように感じました。
わたしは幼い頃、言葉がなかった時代は「うれしい」とか「かなしい」という気持ちを伝えることができず、そうした思いを自分だけで抱えていることはさぞかし辛かっただろうと思っていました。けれども年を重ねて色々と知っていくうちに、人類の歴史には言葉より先に歌やハミングがあり、身振り手振りでコミュニケーションをする、ボディランゲージが主流の時代もあったのだということを知ったとき、妙に納得したことを覚えています。今回の「ローエングリン」は、現代的な作品ではありますが、感情を発露することの、原始に触れるような部分もあると思っています。主人公であるエルザの主たる感情は「悲しみ・後悔・怒り・狂気」など、一般的にはネガティブとされる方向のものではありますが、そうした感情に蓋をせず出し切ることで、むしろ解毒されるような場と空間をつくることができたらと願っています。
©CREA
演出:吉開菜央
1987年山口県生まれ。映画作家・振付家・ダンサー。日本女子体育大学舞踊学専攻卒業、東京藝術大学大学院映像研究科修了。作品は、国内外の映画祭での上映をはじめ、展覧会でもインスタレーション展示され、MVの監督や振付、出演も行う。「Grand Bouquet」サンディエゴアジア映画祭 Best International Short受賞(アメリカ・2019)、カンヌ国際映画祭監督週間2019正式招待、「風にのるはなし」Motif Best experimental film(アラスカ・2018)、「ほったまるびより」文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門新人賞受賞(2015)、「みづくろい」YCAM架空の映画音楽の為の映像コンペティション最優秀賞受賞(坂本龍一氏推薦・2013)。米津玄師MV『Lemon』出演・振付。2020年12月には自身にとって初の監督特集上映「DANCING FILMS」が開催された。最新作「Shari(2021)」は全国で公開、ロッテルダム国際映画祭に公式選出。
「翳りに咲く」
魔術と神秘といえば、中世における芸術の主題である。さまざまなアルカナ(秘蹟)をめぐる、思考の綾。一方、狂気といえば、17世紀から19世紀におけるヨーロッパ芸術のもっとも重要な主題だろう。。
これらはすべて、世界がまだ不均等な偏りに満ちていた時代の産物である。21世紀の現在、幸か不幸か、いつのまにか世界はすみずみまで光に照らされて、どこかすべすべとした感触をたたえるようになってしまった。
ところが、この時代にあっても魔術と神秘を、そして狂気を執拗なまでに主題にし続ける芸術家がいる。サルヴァトーレ・シャリーノ。シチリア島に生まれ、今ではウンブリア州の片田舎に住む作曲家だ。
イタリアの陽光の中で暮らしながらも、彼の音楽に光がさすことはない。その震える擦過音にみちた響きにさらされると、この世界の輪郭は突然になめらかさを失い、ゴツゴツとした手触りに転じながら影を作りはじめるのだ。光のとどかない領域。実はいまでもひそかにわれわれを取り巻いている、そうした翳りをシャリーノの音楽は静かに指し示す。
ローエングリン。
誰もがあの楽劇を思い浮かべるにちがいない。はかなくもせつない永遠の喪失の物語ではあるが、30代のワーグナーの手による音楽は、すみずみまでまばゆい光に満ちている――しかし、もしもこの物語の翳りに、翳りだけに焦点をあてたとしたら。
シャリーノの「ローエングリン」はそうした試みだ。2024年、この翳りに咲くオペラが横浜に漂着する。
(神奈川県民ホール 芸術参与:沼野雄司)
《神奈川県民ホール開館50周年記念オペラシリーズ》
シリーズ第1弾は、2022年10月に「浜辺のアインシュタイン」を上演いたしました。
東京オリンピックの開会式・閉会式での起用も記憶に新しい平原慎太郎(演出・振付)、小澤征爾に見いだされた気鋭の指揮者・キハラ良尚を中心に、これからの日本音楽界、舞踊界を牽引する若い力を結集し、日本初演から実に30年ぶりとなる新制作上演に取り組み、革新的なステージに大きな支持を得ることができました。
https://www.kanagawa-kenminhall.com/einstein
出演者/スタッフ
【エルザ役】橋本 愛

1996年生、熊本出身。
2013年、映画「桐島、部活やめるってよ」、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」出演。同年、日本アカデミー賞新人俳優賞、キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞、ヨコハマ映画祭最優秀新人賞など数々の新人賞に輝く。NHK大河ドラマ「西郷どん」(2018)「いだてん~東京オリムピック噺~」(2019)「青天を衝け」(2021)、NTV「家庭教師のトラコ」(2022)、Netflixドラマ「舞妓さんちのまかないさん」(2023)、映画「熱のあとに」(2024)のほか、数々のドラマや映画、舞台で活躍し、鮮烈な印象を残す。人気YouTubeチャンネルでの「木綿のハンカチーフ」「まばたきの途中」歌唱や、週刊文春連載「私の読書日記」、シャネルフレグランス&ビューティアンバサダーとしての活動など、凛々しくも柔らかな才能が注目を集めている。
【指揮】杉山洋一
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作曲家。1969年東京生まれ。作曲を三善晃、フランコ・ドナトーニ、サンドロ・ゴルリに、指揮をエミリオ・ポマリコ、岡部守弘に師事。作曲家としてミラノ・ムジカ、ヴェネチア・ビエンナーレをはじめ、国内外より多くの委嘱を受ける。指揮者として東京都交響楽団、ヴェローナ野外劇場管弦楽団、ボローニャ・テアトロコムナーレ交響楽団など日欧で多くのオーケストラ、アンサンブル、オペラを指揮。オルガナイザー、プロデューサーとしての活動も活発で、高橋悠治作品演奏会I「歌垣」(2018)、同II「般若波羅蜜多」(2019)、松平賴暁のオペラ《The Provocators~挑発者たち》(2018)、フェニーチェ堺のオープニングシリーズ「武満徹ミニフェスティヴァル」(2019)などに携わり、いずれも指揮も担当している。作曲家として、第13回佐治敬三賞、第2回一柳慧コンテンポラリー賞受賞。指揮者として2018年芸術選奨文部科学省大臣新人賞受賞。1995年にイタリア政府から作曲奨学金を得て以来ミラノ在住。現在ミラノ市立クラウディオ・アバド音楽院で教鞭をとる。
主催 | 神奈川県民ホール[指定管理者:公益財団法人神奈川芸術文化財団] |
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