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主催事業情報 2023/8/28 【特別インタビュー】トマ・オスピタル 9/8(金)オルガンリサイタル開催!

9/8(金) オルガンリサイタル開催!

トマ・オスピタル 特別インタビュー

トマ・オスピタル ©Céline-Nieszawer

1975 年に初めて公共ホールに設置された、神奈川県民ホール小ホールのドイツのヨハネス・クライス社製のオルガン。以来、その豊かな響きが多くの聴衆を魅了してきた。リサイタルに加えて、気軽にオルガンを楽しむマチネ・シリーズなども展開。オルガン・ファンだけではなく、近隣住民にも憩いの時間を提供し、オルガン文化の発展に寄与してきた。
この9 月、1990 年生まれで今もっとも注目を集めているフランスのオルガン奏者のトマ・オスピタルのリサイタルが実現する。数々のコンクール受賞歴をもち、若くしてパリ国立高等音楽院教授をつとめる彼は、現在県民ホール オルガン・アドバイザーをつとめる中田恵子とは、フランスで親交を結んでいる。中田も交えて、今回のリサイタルについて、オルガン音楽の魅力について、大いに語ってもらった。

中田恵子 ©taira_tairdate

 

中田私はオルガンを本格的に始めたが遅かったのですが、オスピタルさんはどのような経緯でオルガンに出会ったのでしょうか。


オスピタルオルガンとの出会ったのは、10 歳の時です。合唱で歌っている父についていったとき、初めてオルガンの演奏を聴き、その壮麗な音色に衝撃を受けました。奏者が私に〈弾いてごらん〉と言ってくれたのですが、もちろん音など出したことはなかったので、弾けませんでした。すると私の手をとって、音を鳴らしてくれたのです。オルガンの響きを直に感じることができました。それがオルガンとの出会いです。

 

インタビューの様子

 

――オルガンは楽器が多種多様だということも、独自の魅力のひとつである。


オスピタルオルガンの場合は、ピアノとは異なり、統一の規格がなく、楽器ごとに非常に違います。スタイル、ストップ、また楽器の歴史なども異なるので、毎回新しい出会いのチャンスがありますね。初めて弾く楽器では、ストップをすべて鳴らし、オルガンそのものの言葉を聞くことを試みます。さらにどんな音が出るのだろうか、と想像を膨らませますので、楽器を知るには⾧い時間が必要になります。


中田県民ホールのオルガンはドイツ製で、同じ横浜のみなとみらいホールやミューザ川崎などのホールの大規模オルガンと比べると、規模は中くらいといえます。またホールの中央に設置され、400 席ほどと客席と距離が近いのも特徴です。


――今回のプログラムは、バッハとフランス音楽から構成されている。


オスピタルストップなどの楽器の情報をいただき、プログラムを考えました。ホールのオルガンの特性に合わせて選曲しています。二部構成で、第一部はバッハをとりあげます。《前奏曲とフーガBWV552》と《コラール・パルティータ》です。第二部は、近現代のレパートリーで20 世紀、21 世紀のフランス音楽をとりあげます。

ジャン・アランの《幻想曲》第1 番、第2 番、私が7 年ほど師事した素晴らしい先生でもあるエスケシュの《エヴォカシオンⅣ》。先生は私に多大な影響をもたらした奏者・作曲家で、近々、私が録音した作品集もリリース予定です。そしてメシアンの《主の降誕》からの抜粋を弾き、また即興演奏も入れる予定です。


中田県民ホールのオルガンのスタイルに合ったプログラムですね。ネオ・バロックなどの輝かしい明るい響きにも合う楽器だと思います。即興についてですが、今回はテーマ、たとえば日本の民謡などをご提案したほうがいいですか。それともまったく自由に弾かれますか。私はフランス留学時代、教会でミサの最後に観衆が退場
する際、本当に壮麗な即興が披露されたのを聴き、とても感銘を受けました。


オスピタル即興については自由に考えていますので、テーマでもいいですし、また絵画のようなイメージを提示してくださってもいいですね。フランスではリヨンとパリの音楽院で即興の授業があり、即興はフランスのオルガンにおいて伝統のようなものです。ただ即興とは作曲するということです。演奏だけではなく、分析、対位法、作曲法なども学ぶ必要があります。フランスの教会では、ミサや聖歌のつなぎなどに自由に即興を入れることが多いですね。

 

中田昨年没後30 年だったメシアンの作品は、県民ホールのオルガンでもさまざまな奏者が演奏しました。オルガン奏者としてのメシアンについて、どのように評価されていますか。

 

オスピタルメシアンは素晴らしいオルガン奏者でもあり、彼のキャリアの初期に、自作自演を数多く手掛けましたが、とても興味深いものですね。私たちは楽譜に
忠実に弾かなければと考えがちなのですが、メシアンはかなり自由な自作自演を展開しており、とても新鮮です。


中田今回、オスピタルさんとは久しぶりの再会ですし、リサイタルをとても楽しみにしています。日本には何度目の来日になりますか。


オスピタル3 度目になります。日本の文化にはとても敬意をもっています。私自身、秩序だったものを好みますので、日本的な緻密なディテールを大切にする美意識などにも共感しますし、食べ物も魅力的ですね。今回、県民ホールの素晴らしいオルガンを通じて、皆様と音楽の喜びをわかちあえることを、願っております。


(取材・文:伊藤制子)


《チケット発売中》

 C×Organ オルガン・コンサート・シリーズ

『トマ・オスピタル オルガン リサイタル』

【日時】2023/9/8(金) 19:00 開演(18:30 開場)
【会場】神奈川県民ホール 小ホール
【料金】全席指定

  一般:3,500円  学生:2,000円(24歳以下/枚数限定) ペア:6,500円

 

《チケット好評発売中!》

 

 公演詳細はこちら

 


トマ・オスピタル Thomas Ospital(オルガン)

パリ国立高等音楽院(CNSMDP)のオルガン課教授。世界で最も素晴らしいコンサート・オルガニストの一人としての地位を短期間に獲得した若いアーティストである。1990年生。バイヨンヌのモーリス・ラヴェル音楽院で学び、2008年に優秀な成績を修め、同年からパリ国立高等音楽院でオリヴィエ・ラトリー、ミシェル・ブヴァール、ティエリー・エスケシュ、フィリップ・ルフェーブル、ラスロ・ファッサンなどの元で学び、オルガン、即興、和声、対位法とフーガの5つのプルミエ・プリを得て15年に卒業した。09年スペインのサラゴサ国際オルガンコンクールで第1位とデュリュフレ賞を、12年シャルトル国際オルガンコンクールで聴衆賞、13年トゥールーズのグザヴィエ・ダラス国際オルガンコンクール第2位、14年芸術アカデミー主催のアンジェ国際オルガンコンクールでJ.F.フローレンツ・グランプリと聴衆賞を、シャルトル国際コンクールで第2位、聴衆賞とフローレンツ賞をはじめ、数々のコンクールで優秀な成績をおさめている。

15年、ジャン・ギューの後任として、フランスで最も大きなオルガンを持つサントゥスタッシュ教会のオルガニストに就任し、15-18年ラジオ・フランス・コンサートホールのレジデンス・オルガニストを務めた。

2023年9月、第9回武蔵野市国際オルガンコンクールの審査員として来日。

 

 

中田 恵子 NAKATA Keiko

神奈川県民ホール オルガン・アドバイザー。
東京女子大学文理学部社会学科卒業後、東京藝術大学音楽学部器楽科オルガン専攻卒業。同大学院音楽研究科修士課程を卒業時、修士論文ではJ.S.バッハ《トッカータ ハ長調》(BWV564)をめぐる演奏解釈を論じ、日本オルガニスト協会年報誌JAPAN ORGANIST 第38巻に掲載される。その後渡仏。パリ地方音楽院で研鑽をつみ、審査員満場一致の最優秀の成績で演奏家課程を修了。これまでにオルガンを湊恵子、三浦はつみ、廣野嗣雄、廣江理枝、クリストフ・マントゥの各氏に師事。チェンバロを大塚直哉、鈴木雅明、ノエル・スピートの各氏に師事。
2013年にフランスのビアリッツにて行なわれた第11回アンドレ・マルシャル国際オルガンコンクールにて優勝。併せて優れた現代曲解釈としてGiuseppe Englert賞を受賞する。帰国後もヨーロッパ、ロシアで演奏ツアーを行うなど、国内外で幅広い演奏活動を行う。2016年〜2019年、東京芸術大学教育研究助手を務め、現在、(一財)キリスト教音楽院講師、国際キリスト教団代々木教会パイプオルガンクラス講師、玉川聖学院オルガニスト、日本基督教団鎌倉雪ノ下教会オルガニスト。(一社)日本オルガニスト協会会員、日本オルガン研究会会員。2019年、キングインターナショナルよりデビューCD「Joy of Bach」をリリースし、「レコード芸術」9月号の準特選盤に選ばれる。また、フランスの音楽誌Diapasonにおいても、音叉5つ獲得という高い評価を受けた。